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田中芳樹 著
アルスラーン戦記02巻『王子二人』
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★アルスラーン戦記09巻『旌旗流転』
★アルスラーン戦記10巻『妖雲群行』
★アルスラーン戦記11巻『魔軍襲来』
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★アルスラーン戦記13巻『蛇王再臨』
★アルスラーン戦記14巻『天鳴地動』
★アルスラーン戦記15巻『戦旗不倒』
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【ネタバレあり】アルスラーン戦記02巻『王子二人』レビュー【小説/完結/田中芳樹】
第02巻『王子二人』 1987年
カイ・ホスロー武勲詩抄(作者不詳)
…荒涼たるマザンダラーンの野に
カイ・ホスローの王旗ひるがえれば
邪悪なる蛇王の軍勢は逃げまどいぬ
春雷におびえたる羊の群のごとくに
鉄をも両断せる宝剣ルクナバードは
太陽のかけらを鍛えたるなり
愛馬ラクシュナには見えざる翼あり
世界の覇王にふさわしき名馬ならん
天空に太陽はふたつなく
地上に国王はただひとり!
たぐいなき勇者カイ・ホスロー
剣もて彼の天命を継ぐ者は誰ぞ…
第一章 カシャーンの城砦
暗灰色の衣の老人「尊師」とその部下である7名の「魔導士」(グルガーン・グンディー・プーラード・アルザング・ビード・サンジェ・ガズダハム)たちは、蛇王ザッハークを復活させるべく、より多くの流血を望んでいた。彼らの目的は、強きを弱め弱きを強めること。戦乱を長引かせるべく、本格的な蠢動を開始する…。
ここで尊師一派の全員が登場。7名合わせて1万の兵に勝るって書かれてるんだけど、たった1万じゃ明らかに足りないんだよなぁ。。魔道を使う割に大して活躍せずにバンバン死んでいく(苦笑)
ルシタニア軍の追手から逃れたアルスラーン一行は、城砦カシャーンの城主ホディールへ助力を求めた。ホディールはパルス全土に100名程度しか居ない、領地と私兵を持つ貴族「諸侯(シャフルダーラーン)」である為、仲間に引き入れ軍備を増強しようと考えたのだ。アルスラーンの申し出を快く受け入れたホディールであったが、それは偽りの姿であった。ホディールはアルスラーンを傀儡にし自分が権力を握るべく、夜の闇に紛れダリューン・ナルサスらの暗殺を謀る。。しかし、ナルサスはその策謀を読んでおり、痛烈な反撃を受けたホディールはダリューンの長剣によって頭部を撃砕された。
中央(王宮)にも力を持ちたいと考える地方貴族ホディールの気持ちも分からなくはないが、ダリューンたちがそれを許すはずもなく…。
「奴隷解放」を正義と感じ、目標の一つとしているアルスラーンは、手始めにホディールが所有していた奴隷(ゴラーム)を解放。しかし、主人を殺された奴隷たちは怒り狂い、アルスラーンに襲い掛かる。危機一髪ダリューンに助けられたアルスラーンは、正義とは太陽ではなく星のようなものであり、自分の信念だけが正しい訳ではないことを思い知る…。
夢と現実とのギャップに悩む14歳。命令通り働いていれば衣食住が手に入るんだから、奴隷の立場で居たい人というのは一定数存在するよね。
第二章 魔都の群像
パルス国の東方国境にそびえるペシャワール城には、カーヴェリー河を挟んだ敵国トゥラーン・チュルク・シンドゥラから国土を守るべく、双刀将軍(ターヒール)キシュワード・老将軍バフマン2名の万騎長と80,000名(騎兵20,000名+歩兵60,000名)の兵士たちが詰めていた。いまやパルス国最大の残存兵力となった彼らのもとへ合流すべく、アルスラーン一行は東への道を急いでいた。。
鷹と二刀流の男、キシュワード登場。天野喜孝の立ち絵がカッコよかったな~。
一方、王都エクバターナを制圧したルシタニア軍は、タハミーネと結婚したいイノケンティス七世と、タハミーネを処刑したい大司教ボダンとの間に溝が生まれ始めており、ボダンが自身の直属部隊である聖堂騎士団(テンペレシオンス)を本国から呼び寄せる事態にまで発展していた。聖堂騎士団長ヒルディゴに率いられ入城するは、神旗を陣頭に掲げた24,000名の神の使い。
宗教+権力=堕落と破滅ってのは、古来から続く真理。政教分離は徹底しないと。
第三章 ペシャワールへの道
ペシャワール城へ急ぐアルスラーン一行に、亡きカーラーンの息子ザンデを従えたヒルメスの追跡隊が迫る。逃げ切れないと感じたアルスラーンら6名は、3組に分かれ東・南・北へ向かって馬を走らせた。ダリューン・ファランギースはザンデと対決。とどめは刺せなかったものの、ダリューンがザンデを退ける。
ダリューンと三十合以上渡り合うとは、ザンデ頑張ったね。
アルスラーン・ギーヴ・エラムの3名は100名を超す兵士に追われていたが、ギーヴが護衛役として奮闘。剣・弓・金貨を使い、追手を次々に倒していく。ファランギースに付き添う形でたまたまアルスラーン一行に加わったギーヴだったが、部下であるナルサスの更に従者でしかないエラムを命がけで守るアルスラーンを見ているうちに、アルスラーンへの忠誠心を芽生えさせていく。。
単騎行のナルサスは、ヒルメスVS遊牧の民ゾット族の戦闘へ遭遇。混乱の中、ヒルメスに殺された族長ヘイルターシュの娘アルフリードと行動を共にすることに。罠を張ってヒルメスの追撃を振り切ったナルサス&アルフリードは、小さな村へ辿り着いた。
アルフリード登場。初登場から元気いっぱい。
しかし、その村は魔導士アルザングの魔術「地行術(ガーダック)」によって村人が全員殺されており、ナルサスらもアルザングの攻撃を受ける。地中に潜む敵に苦戦するナルサスであったが、土に油を染み込ませ、アルザングを焼き殺すことで窮地を脱する。ナルサスの武勇と明敏さに感心したアルフリードは、ナルサスの妻となる旨を宣言。弾むような足取りで家へ向かう少女を、ナルサスは茫然と眺めやった…。
作中でナルサスが一番困るシーン(笑)…笑うところなんだけど、結末を知った今となっては、ここら辺は悲しいシーンでもある…。
第四章 分裂と再会と
魔導士たちが暗躍し各地で血を流していくにつれ、暗灰色の衣の魔導士である尊師は徐々に活力と若さを取り戻し、老人から壮年の姿となっていた。アルザングを殺され6名となった魔導士たち。次に勅命を受けたサンジェは、聖堂騎士団長ヒルディゴの暗殺を行い、ルシタニア軍内の派閥争いに拍車をかける。
蛇王ザッハークを蘇らせる為に血を流している筈なんだけど、何故か尊師がどんどん若返っていく。尊師の正体とは一体…?(ザッハークではない)
ヒルディゴの死によって完全に決裂したイノケンティス七世派(ギスカール王弟派)と大司教ボダン派は、血で血を洗う戦闘状態へ。聖堂騎士団と共にエクバターナを脱出したボダンは、マルヤム方面にある聖堂騎士団の城へ向かったのであった。
ルシタニア軍にとって、終わりの始まり。。
ペシャワールへ向かうダリューン・ファランギースの前に、ふたたびザンデが現れる。ダリューンへ切りかかるザンデであったが、ただ一合で馬上から叩き落された。迫力と闘志はともかく、ダリューンにとってザンデは遥か格下の相手だったのである。急斜面を転がり落ちるザンデを横目に先を急いだダリューンたちは、アルスラーン・ギーヴ・エラムと合流を果たす。
ダリューンとまともに戦えるのは殆ど居ないからねぇ。ザンデでは役者不足もいいとこ。
未だ合流を果たせずにいるナルサスの捜索をダリューン・エラムに任せたアルスラーンは、ギーヴ・ファランギースに伴われペシャワールへ向かっていた。北方の彼方には英雄カイ・ホスローが蛇王ザッハークを封印したデマヴァント山が禍々しく聳え立ち、その異様な姿を初めて見たアルスラーンは、思わず息を呑む。20枚の厚く巨大な岩板による封印の効力は、約300年。。その封印は、間もなく破られようとしていた。
剣もて彼の天命を継ぐ者は誰ぞ…
第五章 王子二人
アルフリードと共に山中をひた走るナルサスは、ふたたびヒルメスと遭遇。銀仮面の男がヒルメスであることを見抜いたナルサスは、ルシタニア人と手を組みパルスの民虐殺に関与したヒルメスを弾劾する。ひとしきり舌戦を繰り広げたのち、再度逃げ出すことに成功したナルサス・アルフリード。そこかしこに潜む追手をなかなか振り切れず手を焼いていたが、すんでのところをダリューン・エラムに救われ、アルスラーンらとも合流。一行はアルフリードを加えて7名となった。
ヒルメスが味方として16翼将に~みたいなレビューをたまに見かけるけど、この大罪がある時点でヒルメスが味方になるなんて天地がひっくり返っても有り得ないのが分からんのかね…。きちんと読め!と言いたい。
いよいよペシャワール城が目前となった一行に、ザンデの部隊が執拗に襲い掛かる。敵兵の白刃がアルスラーンの頭部に振り下ろされそうになったその時…上空を舞っていた風の一部が黒いかたまりとなって落下し、敵兵に重なった。。キシュワードの飼っている鷹「告死天使(アズライール)」である。5,000名の騎兵を引き連れたキシュワードが援軍に現れ、ザンデの部隊は撤退。アルスラーンらは無事ペシャワール城へ入城を果たす。ペシャワール城にて英気を養う一行。しかし、ダリューンの伯父ヴァフリーズから手紙を受け取ってから、宿将バフマンは精彩を欠いていた。バフマンはアルスラーンの出生に関する秘密を知ってしまい、その重さに耐えかねていたのだ…。
一人で抱え込まなくても良いのに。。
気分転換に城壁の上へ出て、夜の空気を楽しんでいたアルスラーン。そこへ現れたのは、旧知の仲であるバフマンを味方に引き入れるためペシャワール城へ侵入していたヒルメスであった。。うわさに聞く銀仮面の男と初めて相対したアルスラーンは、ダリューンと互角以上に渡り合った恐るべき剣技の持ち主を前に、ただ一人きり…。銀仮面の両眼に燃え上がる毒炎に戦慄するアルスラーン。何とか抜刀したものの、その音は獅子の歯ぎしりに対する野ウサギの悲鳴でしかなかった。。
無我夢中でヒルメスから逃れようとしたアルスラーンは、無意識にたいまつを手にする。すると、怒涛の勢いで襲い掛かっていたヒルメスが、たいまつの火にたじろいだ。小さい頃に顔の半分を焼かれたトラウマにより、ヒルメスは火に対して拭いようのない恐怖を覚えてしまうのだ。。命の灯を消さずに済んだアルスラーンのもとへダリューン・キシュワード・ギーヴ・ファランギースが駆けつけ、4名の戦士(マルダーン)が5本の剣でヒルメスの周囲に白刃の壁を築いた。
これ以上ないくらい絶体絶命のピンチがブーメランとなってヒルメスへ。。流石に逃げ切れないだろうと思ったら…。
そこへバフマンが現れ、その方を殺せばパルス王家の正統の血が絶えてしまうと、哀願の叫びを放つ。バフマンの言葉にダリューンらが疑問を覚えた一瞬の隙をつき、ヒルメスは城壁上から濠へダイブ、その姿は闇へ消えた。バフマンに対して先ほどの言葉の意味を問いただそうとするキシュワードらだったが、シンドゥラ王国数万の軍勢がパルスへ攻め入ってきたという報告を受け、急ぎ迎撃に向かう。彼らが去った後、ただ一人バフマンは城壁にうずくまって茫然としていた。。
アルスラーン戦記02巻『王子二人』 完
バフマンの台詞によって浮かび上がる事実は二つ。ヒルメスが正統の血を引いていること。そして、アルスラーンが正統の血を引いていないこと。。
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