ここは、
田中芳樹 著
アルスラーン戦記01巻『王都炎上』
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★アルスラーン戦記01巻『王都炎上』
★アルスラーン戦記02巻『王子二人』
★アルスラーン戦記03巻『落日悲歌』
★アルスラーン戦記04巻『汗血公路』
★アルスラーン戦記05巻『征馬孤影』
★アルスラーン戦記06巻『風塵乱舞』
★アルスラーン戦記07巻『王都奪還』
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★アルスラーン戦記09巻『旌旗流転』
★アルスラーン戦記10巻『妖雲群行』
★アルスラーン戦記11巻『魔軍襲来』
★アルスラーン戦記12巻『暗黒神殿』
★アルスラーン戦記13巻『蛇王再臨』
★アルスラーン戦記14巻『天鳴地動』
★アルスラーン戦記15巻『戦旗不倒』
★アルスラーン戦記16巻『天涯無限』
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【ネタバレあり】アルスラーン戦記01巻『王都炎上』レビュー【小説/完結/田中芳樹】
第01巻『王都炎上』 1986年
第一章 アトロパテネの会戦
アトロパテネ平原における、国王(シャーオ)アンドラゴラス三世率いるパルス軍223,000名(騎兵85,000名+歩兵138,000名)VSイノケンティス七世&王弟ギスカール率いるルシタニア軍368,000名との決戦。この戦いにパルス軍が投入した主な将軍は、大将軍(エーラーン)ヴァフリーズの他、クバード・シャプール・カーラーン・マヌーチュルフ・クシャエータ・クルプ・ハイル・ダリューンら8名の万騎長(マルズバーン)たち。そして王太子アルスラーンも、14歳にして初めて戦場の地に立っていた。
サーガの始まり。
兵数はルシタニア軍の方が上。しかし、万騎長を8名揃えた上に兵士の練度も高いパルス軍が有利なのは、一目瞭然。騎兵主体のパルス軍が動きやすい平原が戦場という点、ルシタニア軍は遠征で疲労が溜まっている点から考えても、普通は勝てる戦なんだが…。
偵察を行った万騎長カーラーンの進言通り、ルシタニア軍に向かって全軍突撃(ヤシャスィーン)するパルス軍。しかし、それはルシタニア軍に寝返っていたカーラーンの罠だった。濃霧によって隠されていた断崖にパルス軍は次々と落とし込まれ、火を放たれる。混乱の中で軍としての統率が取れず、パルス軍は崩壊。更に、戦場を離脱しようとしたアンドラゴラスとヴァフリーズの前に銀仮面の男が現れ、ヴァフリーズを一刀両断。アンドラゴラスは虜囚の身となってしまう。
万騎長が1人裏切っただけでここまで大敗するのはおかしいんだけど、今まで勝ち続けてきた所為で大国としての奢りがあったのかもね。。でも、自国の領土に長さ1ファルサング(約5キロ)幅30ガズ(約30メートル)もの大きな断崖がある事を知らないってのは、文明レベル高い割に地質調査がザルすぎるでしょ…地図無いのか(苦笑)
一方、王太子アルスラーンは部下とはぐれ一人戦場を彷徨っていたが、すんでのところで万騎長ダリューンに助けられる。敗残兵となった二人は辛くも戦場を離脱し、ダリューンの旧友ナルサスの元へ向かう。夜になり、半月が平原に残留する霧を照らし出した時、戦場に現れたのはパルス軍の累々たる死体の連なり。パルス軍はこの会戦において、総兵力の約半分である127,000名(騎兵53,000名+歩兵74,000名)を喪ったのであった…。
大将軍ヴァフリーズと万騎長4名(マヌーチュルフ・ハイル・クシャエータ・クルプ)が、この戦いで戦死。そしてアンドラゴラス三世と万騎長シャプールが捕虜に。マヌーチュルフは後から少し記述されるけど、ハイル・クシャエータ・クルプは名前しか出てこないから、どんな万騎長だったのか知りたかったところ。
第二章 バシュル山
戦場を脱出したアルスラーン&ダリューンが、ナルサス&エラムと合流。王宮を嫌い芸術を愛するナルサスを、金銭や高い地位ではなく、宮廷画家という肩書をもって口説き落とすアルスラーン。ナルサス&エラムを仲間とし4名となった一行は、追ってきたカーラーンの部下を撃退し、バシュル山の森深くにある洞窟へ身を潜めた。
銀河英雄伝説のヤン ウェンリーもそうだったけど、田中芳樹が書く味方の軍師って頭良すぎ(笑) 敵が何しようと全部手のひらの上だからなぁ。こんなのが敵軍に居たら、たまったもんじゃない。
ところで、アルスラーン戦記は物語に出てくる食べ物が凄く美味しそう。例えば今回アルスラーンたちが食べてるのは、葡萄酒・鳥肉のシチュー・蜂蜜をぬった薄パン・羊肉と玉ねぎの串焼き・チーズ・乾リンゴ・乾イチジク・乾アンズ。あ~食べたい。
第三章 王都炎上
サーム・ガルシャースフの万騎長2名が守りを固める王都エクバターナ。そこへ大司教且つ異教審問官(インクイシチア)であるジャン・ボダン率いるルシタニア軍が攻め入ってきた。城門を開けようとしないパルス軍に対し、見せしめとして捕虜になっていた万騎長シャプールに拷問を加えるボダン。臍を噛むパルス軍であったが、旅の楽士ギーヴがシャプールの意を汲み、矢で射殺。彼を苦痛から救ったのであった。
ここでギーヴ登場。20代前半にも関わらず弓矢の腕前が神技の域に達している上に剣の腕も上々。しかもカッコよくて女性からモテモテ。一言で言ってチートキャラ(笑)
東西1.6ファルサング(約8キロ)南北1.2ファルサング(約6キロ)高さ12ガズ(約12メートル)厚さ7ガズ(約7メートル)という厚い城壁で守られているエクバターナは、まさに鉄壁。だからこそ、簡単に城門を開ける事は出来ないんだよねぇ。
ルシタニア軍の猛攻に十日以上耐えていたパルス軍であったが、ルシタニア軍に扇動された奴隷たちの蜂起によって、とうとう城門が開かれてしまう。。雪崩れ込むルシタニア軍の攻撃と奴隷たちの反乱、更には秘密の地下道から入り込んだ銀仮面の男とカーラーンの軍勢も加わり、内と外から挟み撃ちとなったパルス軍は崩壊。。ガルシャースフが戦死し、サームは捕虜となった。
どんどん死んでいく味方…。
占領したエクバターナにおいて、略奪と流血の狂宴を貪るルシタニア軍。女子供の区別なく殺され、なすすべなく倒れていくパルスの民衆。。そんな中、大神殿で暴れていたルシタニア小隊の前にギーヴが現れ、これを一蹴。略奪品をせしめたギーヴは王都を後にし、夜の帳の中へ姿を消した…。一方、王宮においてもルシタニア軍の蛮行は留まる事を知らず、そこかしこで女が犯され、そして殺されていった。。更に、大神官(マグパト)の裏切りによって居場所が割れたタハミーネも、サーム同様ルシタニア軍の捕虜となった。
アルスラーン戦記では一貫してルシタニア軍を「絶対悪」として描いていて、それは悪名高き十字軍をモデルにしているから、侵略描写がひたすらに惨い。まさしく、人の皮を被った豚って感じ。
イノケンティス七世の前に、タハミーネが引き立てれる。模範的なイアルダボート教信徒として人生を歩んできたイノケンティスと、数々の男を篭絡し不幸の谷底へ落とし込んだ妖艶な美女タハミーネが出会ったとき、それは起こった。タハミーネの姿を見たイノケンティスはしばらく無言だったが、全身が小刻みに震えだしたのである。。イノケンティスは、タハミーネとの結婚を決断していた。
一目惚れ。。一国の国王ともなれば好きなだけ楽しめるのに、何故わざわざタハミーネを選ぶのか…。
第四章 美女たちと野獣たち
アルスラーンたちの行方をなかなか掴めないカーラーンは、近隣の村を襲って村人を焼き殺し、出頭する様アルスラーンらに脅しをかける。
せっかく万騎長まで栄達したのに、堕ちたなぁ…。
エクバターナを脱出したギーヴが、ミスラ神の神殿から遣わされた女神官(カーヒーナ)ファランギースと出会う。ルシタニア軍の小隊を撃破した二人は、アルスラーンを助けるため、彼を探す事にした。
妖艶且つ絶世の美女ファランギースが登場。ギーヴと同様弓矢の腕前が神技級で、精霊(ジン)の声を聞くことが出来る。ついでに、登場人物の中で一番酒が強い酒豪(笑)
お互いカーラーンの部隊を監視していた為、合流する事が出来たアルスラーンたちとギーヴ&ファランギース。6名となった一行は、カーラーンを倒すべく戦いを挑む。
これで、アルスラーン・ダリューン・ナルサス・エラム・ギーヴ・ファランギースの6名が集結。やっぱりこの6名って特別感があるね。初期から居る仲間だから。
カーラーンの刃からアルスラーンを守ったダリューンが、カーラーンと一騎打ち。徐々にカーラーンを追い詰めたその時、カーラーンが馬上から転落。自身の折れた槍が首に刺さり、裏切り者カーラーンは絶息した。正統の王が居るという言葉を残して。。
最後のダリューンとの一騎打ちでは武人らしいカッコよさを少し見せたけど、自分の折れた槍が首に刺さって死ぬという、イマイチしまらない最後だった。
第五章 玉座をつぐ者
冷え冷えとした湿気が石に張り付く地下の一室で、暗灰色の衣の老人が古い羊皮に描かれた絵を見ていた。王冠をいだいた浅黒い顔と赤い両眼を持つ男。その男の両肩からは、黒い二匹の蛇が生えていた。。そう、蛇王ザッハークである。暗灰色の衣の老人は6名の魔導士を従える尊師であり、アトロパテネ会戦において霧を発生させたのは彼の魔術によるものであった。
アルスラーン戦記は基本的には騎兵・歩兵が活躍する普通の戦記モノ。しかし、一部魔術や精霊が出てくる。ただ、あくまでスパイスとして登場するだけなので、パワーバランスを著しく壊したりはしない。少なくとも第一部では。
銀仮面の男に頼まれて霧を発生させた尊師であったが、その目的はザッハークの復活だった事が判明。パルスの地を千年にわたり支配していた魔王がもうすぐ復活すると、ほくそ笑む尊師。
実際に復活を見れたのは約30年後だけどね。田中芳樹が遅筆故に…(苦笑)
ルシタニア軍の支配が続くエクバターナ。南門前の広場では、ボダンによる焚書が行われていた。焼き捨てられた邪悪な異教の書は、実に千二百万巻。。歴史・詩・地理・医学・薬学・哲学・農事・工芸…無数の人々の苦労や情熱が、炎の中で炭化し、灰と化した…。
本を焼くなんて、まさに非道。この宗教的原理主義者が出てくるたびに早く死なないかなぁと思っていたが…実際に死ぬまで、読者は約20年も待たされる事となる…。
焚書の様子を隠れて見ていたダリューンとナルサスが、銀仮面の男と対峙。黒衣の騎士ダリューンですら戦慄する程、銀仮面の男の剣技は卓越していた。劣勢に追い込まれるダリューンであったが、ナルサスの加勢により何とか有利な展開に。銀仮面の男は雑踏の中へ消えた。
この時点では、まだダリューンより銀仮面の男の方が若干強い。あのダリューンより更に強いって、、もはや化け物。
地下深い獄舎に繋がれたアンドラゴラスのもとに、銀仮面の男が訪れる。自分は先王オスロエス五世の嫡子ヒルメスだと名乗り、王位の正当性は自身にこそあると宣言した。しかし、その言葉を聞いたアンドラゴラスは何故か哄笑する。玉座から追われ、国土を奪われ、王位の正当性すら否定された男が笑う理由とは、一体何か。。
パルス国320年。国王アンドラゴラスは行方を断ち、王都エクバターナは陥落…パルス王国は滅びた。。
アルスラーン戦記01巻『王都炎上』 完
先王の弟であるアンドラゴラスより先王の子供であるヒルメスに、普通は王位継承権がある。普通はね。。
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